医療・介護について

医療・介護

ご自身やご家族が医療行為を受けた後、予期せずに後遺症を負ったり、お亡くなりになってしまった場合、医療機関への怒り・悲しみを感じると共に、その医療行為に問題があったのではないかと疑問に感じることも少なくないでしょう。そのような場合、担当医や病院に説明を求めたものの納得のできる説明を受けられず、どうしたら良いか途方に暮れることもあるかもしれません。

これは医療機関に限らず、介護施設のサービスを利用している方々についても同様で、介護の方法に問題があったのではないかと介護施設への不信感を抱くことがあると思います。

このような医療ミス・介護ミスではないかと感じるケースについて、どのように取り組んでいく必要があるのでしょうか。

手続の流れ



調査

ご相談者が疑問をお持ちの医療行為・介護行為をめぐり、医療機関・介護施設に対してどのようなことを求めたいかはご相談者によっても異なるところかと思います。

「元に戻してほしい」(原状回復)、「何があったのかを知りたい」(真相究明)、「今回のことを謝罪してほしい」(反省謝罪)、「二度と同じことが起こらないようにしてほしい」(再発防止)、「今回のことの補償・賠償をしてほしい」(損害賠償ないし補償)などご相談者の方々によって要望は様々と思います。

しかし、損賠賠償を請求するにしても、真相を究明するにしても、医療機関に謝罪させるにしても、そもそもどのようなことが起こり、医学的にどのように評価できるのかが判断できなければ医療機関との話合はなかなか難しくなります。そこで、上記の5つの要望についても、まずはご相談者やそのご家族が受けた医療行為・介護行為について問題があったかどうかを具体的に調査する必要があります。特に医療には4つの壁(密室性・専門性・封建制・司法)があるともいわれますが、この4つの壁に立ち向かって自身の要望を医療機関に認めさせるためには、綿密な調査が必要になります。

1.診療経過等の検討

まず、調査では診療経過について検討し、一連の医療行為や介護行為に問題がなかったかを調査していくことになります。

具体的には、カルテや検査記録、介護日誌などで事実経過を検討し、医学文献等を参考に当時の医学的知見を確認していくことになります。なお、診療経過の検討にあたり、カルテを取得する方法にはご自身で病院から開示を受ける方法(カルテ開示)、証拠保全という裁判所の手続を取る方法の2つあり、それぞれのメリット・デメリットは以下の表のとおりになります。

2.様々な制度の利用

医療事故が起きた場合、単純に病院に対して損害賠償を請求したり、説明を求めたりするだけではなく、様々な制度を利用することができます。

(1) 医療版事故調査制度

2015(平成27)年10月以降の死亡事故については、事故調査制度を利用することができます。もっとも、すべての死亡事例について事故調査制度を利用することができるわけではなく、いくつか条件を満たさなければなりません。具体的には、①患者さんの死亡が医療行為に原因があると思われること、②死亡することが予想できなかったことの2つです。

この条件に合致した場合には、以下のような流れで手続が進ことになります。

この手続は、賠償請求の話をする場ではなく、当該医療事故の原因を調査して、今後の医療に生かしていくこと(再発防止)が目的となります。

(2) 医薬品被害者救済制度

この制度は、医薬品()を適正に使用された場合に、当該医薬品の副作用に対して、被害給付を行う制度で、独立法人医薬品医療機器総合機構(通称「PMDA」)に対して給付請求します。

抗癌剤等は対象除外医薬品に指定されています。

具体的に給付対象となる健康被害は、①入院を必要とする程度の疾病、②日常生活が著しく制限される程度の後遺障害、③死亡の場合に限られます。

そして、被害救済には、①医療費、②医療手当、③障害年金、④障害児養育年金、⑤遺族年金、⑥遺族一時金、⑦葬祭料があります。

制度詳細につきましては、
PMDAのホームページ(https://www.pmda.go.jp/relief-services/index.html/)をご覧ください。

(3) 産科医療保障制度

2009年1月1日以降に出生したお子様で、身体障害者手帳1・2級相当の脳性麻痺が残ってしまった場合で、次の基準をすべて満たす場合に補償金を支払ったりする等する制度です。

(a) 2009年1月1日から2014年12月31日までに出生したお子様の場合

  • ① 出生体重2,000g以上かつ在胎週数33週以上、または在胎週数28週以上で所定の要件
  • ② 先天性や新生児期等の要因によらない脳性麻痺
  • ③ 身体障害者手帳1・2級相当の脳性麻痺


(b) 2015年1月1日以降に出生したお子様の場合

  • ① 出生体重2,000g以上かつ在胎週数33週以上、または在胎週数28週以上で所定の要件
  • ② 先天性や新生児期等の要因によらない脳性麻痺
  • ③ 身体障害者手帳1・2級相当の脳性麻痺

上記要件を満たし、補償の対象となった場合、次の補償金を受け取ることができます。


また、補償対象となりますと、上記補償金を受け取るだけでなく、医学的観点から当該事故の原因分析が行われ、脳性麻痺発症の原因、診療行為等の医学的評価、再発防止の提言などについて取りまとめた原因分析報告書が保護者と分娩機関へ送付されます。

この原因分析報告書は、事例の集積をまって再発防止に関する報告書にまとめられ、再発防止に生かされることになります。

交渉等

調査をした結果、医療機関や介護施設の処置等に法的にも問題があったと考えられる場合には、相手方に対して賠償請求や謝罪・説明などを具体的に求めていくことになります。

この際、方法としては、①当事者間での話合い、②医療ADR、③民事調停の3つの方法が考えられます。

1.当事者間での話合い

まず、医療機関と任意で話合いをすることが一つ方法として考えられます。任意の話合いで解決することができれば、最も迅速に解決することができますが、当事者のみでの話合いで第三者が関与しないため、患者さん側と医療機関側の考えに大きな開きがある場合には、話合いでの解決は極めて難しくなります。

2.医療ADR

当事者だけではなく第三者も関与させて話合いを進める方法もありますが、その一つが医療ADRという手続です。

これは特定の弁護士会が裁判外での紛争解決方法として設置しているものです(※1)。手続の特徴などはそれぞれ異なりますが、例えば、東京三会(※2)の医療ADRは基本的に3人の弁護士が仲裁員として紛争を仲裁するために尽力してくれます。この3人の属性は、一人がもっぱら患者側で活動している弁護士、もう一人はもっぱら医療機関側で活動している弁護士、最後の一人は仲裁経験豊富な弁護士の3名からなります。

この手続は医療事件の経験が豊富な弁護士が関与してくれることもあり、医学的な問題点への理解も深く、事件の妥当な解決の手助けをしてくれます。また、患者さんやそのご遺族のお話も真摯に聞いてもらえる点もこの手続のメリットの一つです。

もっとも、この手続はあくまで弁護士会での手続ですので、いわゆる時効中断の効果はありません。
※1 例えば、東京三会、大阪弁護士会などに設置されています。
※2 東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会の3つの総称。

3.民事調停

当事者以外の第三者を関与させる話合いの方法のもう一つは、民事調停です。

民事調停は、裁判所で話合いをしますが、当事者以外に調停員が2名、調停官が1名関与して話合いを進めることになります。もっとも、この3名は必ずしも医療事件に明るい弁護士とは限りません。

他方、民事調停は医療ADRと異なり、申し立てることで時効を中断させることができますので、この点は民事調停のメリットと言えます。

訴訟

上記の交渉等を経ても、相手方と和解することができなければ、裁判所に訴訟を提起することになります。

訴訟では最終的に裁判官が判決という形で公的な判断を示してくれるという点は良い点ですが、この判決を作成するにあたり問題となる法的論点から外れると、訴訟のまな板からは外れてしまうことが通常ですので、患者さんやご遺族の問題意識と訴訟での議論がずれてしまうこともあります。

そのため、どのように訴訟を進めていくのかも含め、訴訟提起前(調査段階)から準備していく必要がありますので、お早めに医療事件を専門に取り扱っている弁護士へご相談することをお勧めします。

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